ぐんめんひみつきち

見た映画の忘備録

バケモノ村滞在記1

私があの村から逃げ出してもう二ヶ月になる。
とある事情で大都会から故郷に逃げた私は一夜の宿を求め、安全そうな村で途中下車した。
するとそこにはおおよそ自分達と同じ生き物だとは思えないような人の言葉を話し二本足で歩行する不気味な動物達がいた。
その不気味な動物達は私の事を村長、村長と呼びここの村の政治経済一切合切の面倒を見ろと要求した。
私はなんの事だかわからないしそんな暇も無いのだが断ると彼ら極彩色のバケモノに何をされるかわからないので渋々了承した。
私はそのままバケモノどもに連行され村の外れに連れてこられ、ここに住めと言われた。
村長と言うからには立派な住居でもあてがわれるのかと思っていたのだが、立派な住居も何も私が住めと言われた土地には建物なんて存在していなかった。
彼らのリーダー的存在、しずえと名乗った犬のバケモノと名前は忘れたがタヌキのバケモノは私にキャンプで使うようなテントを押し付けとりあえずこれに住めと言い残しランタンを一つ置いて去って行った。
既に暗くなってきたので、当初の目的であるこの村で一泊するという事は達成できたと前向きに考えるとそこらへんに落ちてた石でペグを打ち、テントを組み立てた。
テントの中は案外快適だったが若干斜面になっているのか寝てると徐々に身体がズレるのが気になった、当然寝袋も無く寒かった。
明日早起きして汽車に飛び乗りこんな恐ろしいところから逃げ出そう、そう思いながら私は緩やかに眠りに落ちて行った。
思えば逃げ出せると思っていたこの最初の夜こそが最も幸せな一晩だったのかもしれない。