ぐんめんひみつきち

見た映画の忘備録

バケモノ村滞在記6

商店街と言うには閑散とし過ぎている。
小さな商店が一つと博物館らしき建物、そして不動産屋。この三つがこの村の商店街の全てだった。
建物自体の数は少なくないのだがテナントが入っていない。
それを見て私は故郷にあった商店街を思い出した。
近くに大型のショッピングセンターが出来る事になり、それでは商店街に人が来なくなると反対し少し遠くにショッピングセンターを作らせる事になった。
しかし客は皆少し遠くのショッピングセンターの方に行ってしまい商店街に活気はなくなってしまった。
私はそれを見て近くに出来れば行き帰りで人が通るからまだそちらの方がマシだったのではないかと思ったものだ。
しかしこの村の近くにはショッピングセンターなんて存在しない、それなのにこんなに荒れ果てているのだ。
いったいこの商店街に何があったのかは後で誰かに聞いてみよう、そう心に決めて私は不動産屋に入った。
不動産屋の店主のタヌキは実に胡散臭いバケモノだった。
タヌキは人を化かすというがこいつはそういう超常現象的能力ではなくもうちょっと現実的な方法で人を化かすのが得意なんだろう、今までに会った誰よりも悪い顔をしている。
私が家を建てたいと言うと料金は後で良い、明日には家が建つという。
色々心配だが料金が後で良いのは今の状況だと素直に嬉しかった、何せ人間の金はこの村では使えないらしいのだ。つまり私は無一文ということになる。
村長として仕事をしていけば給料も入るだろうがまずは当座を凌ぐ金が必要だ。
タヌキに相談するとそこらに生えてる果物や昆虫を捕まえて村にある店に売れば良いと言うではないか、なんて狭い範囲で経済が回っているのか。
これは後に明らかになる事だが事実この村の経済はこのタヌキ一族と村にある商店のカピバラのバケモノ達による完全な支配体制だった。