バケモノ村滞在記5

役場から出ると慌てた様子でしずえが追いかけてきた。

「村長さん！村長さん！すっかり忘れてたんですが村長さんに村長さんの記念の植樹を村長さんにやってもらうのを忘れてました！」

いまいち何を言ってるのかわからないが木を植えればいいらしい、何かの記念に木を植えるのは例えバケモノしか住んでいない村でも行われている行事のようだ。

どうやら本来は昨日やるイベントのようだったがすっかり忘れてたらしい。

落とし穴から抜け出したフォアグラとしずえが見ている中、村の広場のようなところで植樹をする。

植樹と言っても土を軽くかけて水をかけるだけだ。

適当にそれっぽく植樹をすると二人が拍手してくれた。

人は記念と言う言葉に弱い気がする、何かにつけ記念、記念と思い出に残るような事をする。

私もつい三十分前まで村から出られないと言う現実に泣きそうになっていたのに二人の拍手を受け、これから村長として少し頑張ってみようかな、なんて思い始めていた。

今考えればこのイベントも人間の心理を上手く利用したしずえの作戦だったのかもしれない。