ぐんめんひみつきち

見た映画の忘備録

山本(実名)

高校の時の友人の山本(実名)の話。

高校の同級生が見たら一発でバレるな。


山本は変態だった。
エロゲーが大好きで、よく将来どんなエロゲーを作って一発当てるかの話をした。
今覚えている内容を列挙すると
  • 幼馴染がメインヒロイン
  • 無事結婚して子供が産まれる
  • 産まれた子供が育ちその子供の幼馴染と結婚し子供を作る
  • サブヒロインは放置してると他の男と家庭を持ち隣に住む
  • 壮大な家族の感動巨編
  • 時々近親相姦

と、今思い出すと中々ひどいものだったが当時はセカイよ、これがエロゲーだ!と盛り上がったものだ。


山本は陸上部だった。
おれはパソコン部的なのだった。
山本は走るのが好きだった。
おれはパソコンを弄るのが好きだった。
部活動で学校のWebサイトの部活動のページを作成することになった。
おれの担当は陸上部、山本が所属している部活動である。
おれはデジカメを手に陸上部が練習しているところに行った。
「ヘイ!山本!部活動でWebサイトを作るんだ!陸上部のページはおれが担当だからちょっと走ってくれよ!写真撮るから!」
山本は二つ返事でOKしてくれた。いい奴である。
写真はとても上手に撮れた、一発で成功である。
しかしここでおれにイタズラ心が湧いてきた。

こいつ写真撮るって名目で何回走ってくれるんだろう?

おれは実行に移した。

「ごめん山本!写真ブレた!もう一回走ってくれ!」
「ごめん山本!今度は前からのアングルで撮りたいんだ!」
「ごめん山本!電池切れてた!」
「ごめん山本!逆光だ!逆から走ってくれ!」
「ごめん山本!なんか気に食わないからもう一回!」

彼は汗をかき、ヘトヘトになりながら何回でも走ってくれた。
彼はどこまでもいい奴だった。
ちなみに私はこれを三年間繰り返した。
もちろん彼もわかっていたのだろうが三年間、一言の文句も言わずに笑いながら走ってくれた。


山本とはクラスも二年間同じだった。
体育の授業、おれは苦手だった。
山本は陸上部、運動は得意だ。
だれもおれとなんてキャッチボールしたくない。
でも山本はおれと毎回キャッチボールしてくれた。
毎回家庭内不和の父と息子の久しぶりのキャッチボールとか変な設定をつけながら笑いながらキャッチボールしてくれた。
彼は本当にいい奴だった。


山本はお腹が弱かった。
よく授業中トイレに駆け込んだり柔道の授業中、柔道着のままケツを押さえながらトイレに駆け込む姿をよく見た。

お腹が弱い山本、それはクラスのみんな、というか学年全員が知っている事実だったと思う。

山本には変な癖があった。
授業中とかは仕方ないが、休み時間等、誰かとトイレに行く機会があると、連れションならぬ連れウンコをしたがった。
連れウンコと言ってもウンコするのは彼だけである。
連れられて来た人間はトイレで彼がウンコをするのを待ち続け、山本の「悪魔の子が産まれた」とかそういうコメントを待ち続ける仕事が待っていたのだ。途中でめんどくさくなりどこかへ待ち人が行くのを阻止するために山本は「坂本ー!いるかー!」とか「原島ー!次の授業なんだっけー!」とか話しかけるのである。
人がいると落ち着いてウンコができないおれからすると山本のこの行動は本当に理解できないものだった。
これはクラスでも少数しか知らなかったことだと思う。

高校二年生の時、修学旅行があった。
山本とおれはクラスが違ったが同じ室長的なやつでその会議で一緒になった。
その会議が終わった時、彼はおれに「ぐんそぅ!トイレ行こうぜ!」と誘った。
もちろんホテルの部屋にトイレはある。しかしあえてホテルの廊下にあるトイレに誘ったのである。
また始まった。
彼は個室へ入って行った。ウンコである。
そしてトイレに響き渡る「ぐんそぅー!!いるかー!!」の声。

おれはまたちょっとしたイタズラ心を出して彼の問いかけを完全に無視することにした。

「ぐんそぅー!!いるかー!!」
「•••。」
「ぐんそぅー!?!?」
「•••。」
「ぐんそぅ!ぐんそぅ!」
「•••。」

山本は大急ぎでケツを拭き出てきた。
なんだよ!いるじゃねえか!冗談やめろよ!と山本は言った。
おれからするの山本の行動の方が冗談ではなかった。


山本は前述の通り運動が出来た。
部活動を引退した後、山本は傭兵としてラグビー部に呼ばれいきなり試合に出された。
高体連だかなんだかのアレで、おれは山本の最初で最後のラグビーの試合を生で観戦していた。
山本は相手チームの大きな体格のラガーマンに吹き飛ばされ中を舞い地面に叩きつけられ気絶した。
山本のラグビー部人生はそこで終わった。


卒業を間近に控え、おれは山本に将来何になるつもりなのか、進路はどうするつもりなのか聞いてみた。
彼は笑いながら
「幼稚園の先生になる!」
と答えた。
こいつロリコンだったのか?幼稚園とは変態過ぎるというか今ここで抹殺するのが世界平和のためじゃないか?と思いながらもよくよく話を聞くと彼は
「おれはロリコンじゃねーよ!興味があるのは親のほうだよ!」
と笑って答えた。
どちらにしても多大に問題がある。


今は何をしているのか知らないし卒業後一度も連絡を取っていないが彼が健やかに生きている事を切に願う。いや本当に。