ぐんめんひみつきち

見た映画の忘備録

バケモノ村滞在記3

いったいどれぐらいの時間が過ぎただろうか、村から脱出出来ないという現実の前に項垂れる私の前にバッタが差し出された。
「食べる?」
先ほどの鴨であった。
私はどう反応していいのかわからず無言で首を振った。
そうか、美味しいのに。と言うとその鴨は私の目の前でバッタをバリバリと食べてしまった。
ならこれは?とその鴨はりんごを差し出した。
私は昨日から何も食べていない事もあり思わず受け取ってしまった。バケモノからもらった食べ物を食べて大丈夫か少し考えたが空腹には勝てずに近くにあった切り株に腰をおろしりんごを齧った。美味い、程良い酸味と優しい甘さが私をだんだん元気にさせていった。
そうだ、村から出られないならしばらくはここにいるしかないのだ、バケモノ共に食われないように友好関係を築く必要がある、まずはこの鴨のバケモノからだ。
「りんごをありがとう、私の名前は」
「村長でしょ」
「いや、私は村長ではな」
「ぼくはフォアグラって言うんだよ村長さん、よろしくね」
どうやら私の名前は村長で決定らしい。
しかし鴨のバケモノの名前がフォアグラとは、親の顔が見てみたいものだ、おそらく同じようなバケモノなんだろうが。
「フォアグラ、私は村長なんだよな?」
「うん、しずえさんが言ってたよ、新しい村長が来るって」
しずえ•••昨日バケモノ共を率いていた犬のバケモノか。
「村長さんこの村に来たばっかりでよくわからないでしょ?しずえさんが役場にいると思うから色々教えてくれると思うよ、ほら、ここから見えるあの建物だよ」
「ありがとう、フォアグラ。行ってみるよ」
この村の事、バケモノの事、初対面の私に村長を押し付けようとしていること、聞きたい事は山のようにある。
私はゆっくりと立ち上がると役場だと言われた大きな建物に向かって歩き出した。ふと振り向くとフォアグラがチョウチョウを捕まえて食べていた。