ぐんめんひみつきち

見た映画の忘備録

バケモノ村滞在記4

私はこのバケモノ村の村長である。
この村にはバケモノしか住んでいない。
自分達は普通の生き物でバケモノではないと認識していること。
人間はとても珍しい。

役場の中でしずえというバケモノから一通りの説明を受けてわかったことだ。
役場にはしずえの机兼受付と私の机の二つだけ、小さい村だからかこれで事足りるらしい。
わたしが村長である事は既に確定らしく何を言っても冗談と受け取られ、前任の村長のまま残されていた机を使ってくれと言われた。
これ以上下手な事を言って食い殺されるよりは村長として生活していた方が色々都合が良いかもしれない。ゴーニハイッテハゴーニシタガエ、昔のコトワザだ、他所ではおとなしくしておけという意味らしい。
幸い説明を聞く限り村長としての仕事はそんなには多くないようだ。条例を決め、公共事業の建設場所を選ぶぐらいだ。
「どうせなら机だけじゃなく家も残しておいてくれたら良かったのになあ」
「それならたぬきちさんに相談してみてください、きっと力になってくれますよ」
何気なく呟いた一言だったがバケモノでも犬は犬と言うことか、耳が良い。
たぬきち、そう、たぬきちと言ったな。昨日しずえと一緒にいたたぬきのバケモノだ。
たぬきちさんは線路を越えた所にある商店街で不動産屋をやっています。村の探検も兼ねて行ってみたらどうですか」
この村にいつまでいることになるかはわからないがいつまでもテントじゃこのバケモノだらけの村で安心して眠れない、鍵付きの家が必要だ。
「そうするよ、ありがとうしずえさん。」
しずえは手を振って見送ってくれた。
役場を出るとフォアグラが落とし穴にハマって藻掻いていた。